追記:配信は終了しました。この記事をお読みくださったうちの何人かの方が、配信の方も見てくださったようで、「見たよ! 面白かった!」とご報告をくださいました。ありがとうございます。今後も良い配信があったら紹介していきたいです。
3/20まで、新国立劇場バレエ団の「アラジン」がYouTubeで無料公開されています。全三幕約2時間。私のこのサイトを見てくれている人は劇団四季好きの方が多いと思うのですが、他の芸術のことも少しは知りたいなあ。と思っている方も多そうな雰囲気です。そういうわけで、私の大好きなこの作品を、この機会にちょっぴり紹介したいと思います。
こんな方向けの記事です。↓
・劇団四季の「アラジン」は見たことがある。もしくは、見てみたいと思っていて、アルプなどで情報を仕入れている。その上でこちらのアラジンにも興味がある(四季ファン向けの記事です。四季の話をかなり交えます)
・バレエはよくわからないけど、一度くらいは見てみたいと思っている(初心者向けの記事です)
記事の筆者はバレエが大好きですが、知識が豊富というわけでもありません。浅い部分もかなりありますので、バレエのことをよく知っている方には退屈な記事かもしれません。退屈だったら、読んだ記事が悪かったなあ、と思ってそっとブラウザを閉じてください。
◎新国立劇場について
まず、上演団体の話を少ししておきます。新国立劇場は、東京・初台にある国立の劇場で、オペラ・ダンス・バレエ・現代演劇などの、西洋が源流の舞台芸術作品を自主事業として上演しています(文楽などの日本の伝統芸術は、新のつかない「国立劇場」が担当しています)。上演する芸術の種類ごとに部門が分かれていて、その中の一つがバレエ団です。
劇団四季と少し絡めた話をしますと、バレエ団の下部組織にバレエ研修所という専門学校のようなところがあって、間辺朋美さんや吉岡慈夢さんはこのバレエ研修所のご出身です(この話したらちょっとは興味持ってもらえんかな。という下心のためだけに書いた段落です)。
バレエ団は創立もうすぐ30年で、ものすごく歴史が長いわけではないけれど、着実に力をつけてきているといったところ。日本のバレエ団には他にもすばらしいところがいくつもありますが、私はこの新国立劇場バレエ団が特に大好きです。現在の芸術監督は吉田都さん。知っている方にとっては都さんここにいたのか!?というビックリ事案ですが、都さんをよく知らない人にわかるように例え話をすると、イチローが中日ドラゴンズの監督やってるみたいなもんです。…いや、違うかも。わかんね〜。私野球よくわかんない(*1)んですよね。野球ファンにめっちゃ怒られそうなので、このたとえは後で消すかもしれません。
(*1)よくわからないし、選手もほぼ知らないのに、中日ドラゴンズ以外(特に巨人)を目の敵にしている地域で育ったため、今でも中日以外を応援できません。名古屋近辺の中日信仰はもはや宗教であります。なお、2004年LKのザズの歌は「燃えよドラゴンズ」だったことがあったらしい、本当かは知りませんが言われてみればそんな気がしてきました。荒木が好きで、1番福留のリストバンドを持っていました(探せば今もあると思います)が、意味不明ですね。荒木のを買えよ。普通に。
◎新国立劇場バレエ団「アラジン」について
現在の芸術監督である吉田都さんの前の前の監督であるディビット・ビントレー氏が新国立劇場バレエ団のために振り付けた超大作で(バケモノの子とかゴースト&レディみたいなもんです)、連日大入りの大人気作です。
皆さんご存知、アラビアンナイトの中の一作「アラジンと魔法のランプ」を題材に取り、煌びやかで楽しく、明るいコメディタッチに仕上げた、とってもワクワクするバレエです。初心者にもとてもおすすめ。
「アラジン」と言えばまず何よりディズニー映画「アラジン」であり、ひいては劇団四季の「アラジン」である…という人は多いと思いますが、原作は別にあるので、元ネタが同じだけの全然違う作品だと思ってください。作曲者も全く違うし、曲も知らないのばかりだと思います。そして何よりランプの精の性格づけが全く違います。
ディズニー版「アラジン」におけるランプの精は、何万年もランプの中に閉じ込められて寂しい思いをし続けてきた、自由を夢見る愛すべき「我々の友人」ですが、今回ご紹介しているの新国立劇場版「アラジン」では、どちらかといえば性格を持たず、「モノ」に近い精霊としてランプの精を描いています。だから、あだ名形の「ジーニー」じゃなくて、「ジーン」。これはイスラム圏での精霊を表す一般?名詞でもあり(イフリートなどの下位存在らしい。と言われて納得したのは、私がちょっとだけファイナルファンタジーに触れたことがあるからかな? みなさんピンときます?)、ほとんど性格づけはないといって良いと思います。
それでも、ジーンを演じる側は表情の変化が求められる場合もあるようです。また、ラストで敵役からランプを取り返したアラジンが、自分のところへジーンを呼び戻す時には、演者もかなり嬉しくなってしまうらしい、という裏話などもあります。こういうことから、ディズニーの「ジーニー」とは異なりつつも、共有する感情を持ち合わせているキャラクターでもある、と思いながら見ると面白いかもしれません。
私が個人的に納得したのは、「ジーンは核のイメージでもある。強大な力で世界を動かすことができるが、使い方を間違えれば人類に滅びをもたらす。それを最後にアラジンが手放すことに意味がある」という振付家の解釈です。この言葉からも、いかに「ジーニー」とは異なるかがお分かりいただけるかと思います。
また、ついでにちょっと別の話も。この作品の振付家であるディビット・ビントレーさんはイギリスの人なのですが、イギリスではアラジンって中国の話として認識されているらしい。でも日本ではそうではない…というところの折衷案として、アラジンは中国系の移民だという設定がなされています。中国風の獅子舞があったり、大型の龍の舞があったりと、四季版アラジンでは見慣れない演出があるのもこの設定のためです。
それでは、簡潔にはなりますが、私の好きなところをざっくりとご紹介したいと思います。
◎宝石の洞窟 〜ゴールドとシルバー
まず、見どころは何と言っても宝石の洞窟のシーンでしょう。敵役(ジャファーではなく、「魔術師マグリブ人」という役名になっています)がアラジンを誘い出して放り込んだ洞窟の場面です。要は、ディズニー版におけるフレンド・ライク・ミーに当たるシーンですが、ランプの精はほぼ出てこず、洞窟の宝石たちとアラジンだけで話が進むので、ずいぶん違ったシーンになっています。①オニキスとパール ②ゴールドとシルバー ③サファイア ④エメラルド ⑤ルビー ⑥ダイヤモンド の順番で、短い踊りを目まぐるしく見せる、とても華やかな見せ場です。宝石それぞれにちょっとした性格づけがあるのか、笑っている宝石といない宝石、アラジンにお土産をくれる宝石とくれない宝石があるのも面白いです。
それぞれにモチーフがあり、また出てくるダンサーの人数が全部違うところも見どころです。①オニキスとパール:6人、ピアノの鍵盤モチーフ(音楽もピアノ) ②ゴールドとシルバー:4人、フランス宮廷貴族 ③サファイア:5人、絵画「ヴィーナスの誕生」 ④エメラルド:3人、インドの寺院と蛇 ⑤ルビー:2人 ⑥ダイヤモンド:ソリスト1人+コールド(=大勢) という感じですね。
どれも大好きなのですが、私は初めて見た中学生の時からゴールドとシルバーが特に大好き! ルイ十四世の頃をモチーフにしているらしく、宮廷舞踊を思わせる荘厳な音楽と衣装(太陽と月のイメージでもあるらしい)を用いて、堅実で丁寧な振付で魅せるのですが、同時にどこか色っぽくもあって、見ているとドキドキしてきます。手を取り合ったり、男性が頻繁にひざまずいたり、女性がずっと微笑んでいたり……この大人の色気に、いたいけな中学生だったワイはだいぶやられてしまったんですね。また、私の大好きな金管楽器が大活躍していて、そういう点でもとっても嬉しいシーン。初めて見た時も、今でも、特に好きな踊りの一つです(あと、映像のキャストに推しがいます笑)。
そのほか、どれもひとつずつ紹介したいんですが、あまりにも長文になりそうでなかなか…。あとはルビーのペアが激ヤバペアなこと、ダイヤモンドのソリストが可愛らしいのに芯があって女王の品格を漂わせていること、最後のところで宝石のティアラを思わせる振り付けがあること……などをちらっと紹介しておくので、興味があったら見てください。あと、私の密かな贔屓はエメラルド女子の片割れです。このへんのことをもっと聞きたかったら直接聞いてください。笑 それから、どうしても中央の宝石たちに目が行きますが、アラジンがかなり好き勝手しているので、それも併せて見ると面白いかもしれません。
この宝石のシーンは華やかすぎて、いつも一瞬で過ぎ去っていきます。あまりにも華やかなので、振付家が「これをラストに持ってきたいくらいだ」と言って、「意味わからんくなるからやめろ笑」と突っ込まれていました。
◎ちょいちょい挟まるダンスシーン
バレエの作品の多くは、お芝居のシーンと踊りを見せるシーンが分離しています。これが初心者にはちょっとハードルが高いことがあり、アラジンもこの方式なのは例に漏れずなのですが、この作品の特色として、ただの踊りのシーンでも飽きさせない工夫がたくさん散りばめられていることがあげられます。ですので、ダンスシーンが混ざっていても、初心者からバレエ大好き人間まで幅広く楽しめるのがこの作品の魅力です!
例えば、アラジンが魔術師マグリブ人(ジャファーに当たる悪役)に連れられて、砂漠を渡って洞窟を探すシーン。「砂漠の風」役の女性ダンサーがたくさん出てきて、ストーリーは特に進まず、アラジンとしばらく踊っているだけなのですが、衣装と振付と音楽がしっかりマッチしていて、砂漠だ、すごい…と感動して眺めているうちにいつの間にか終わっています。ダンサーがタイツを履かずに素足で踊っているところや、照明の加減、流れるような振付から、見事な砂漠の風が表現されています。
砂漠の風のシーンに限らず、そういうところがたくさんあります。市場で暴れるアラジン、街で出会った破天荒な少年に一人思いを馳せるプリンセス、二人の結婚のパドドゥや、ラストの帰還のパドドゥ、他にもたくさんそういうシーンがあるので、「この踊りが好きだ!」というのがあった方がいたら、ぜひ教えて欲しいですね。
◎魅力的な主力陣
スター制を取らない劇団四季を贔屓にしておきながら、その中に贔屓俳優を作っている四季ファンの皆様(※私含む)におかれましては、やはり他団の作品を見る上でも主力陣の魅力を少しは知っておきたいとお考えになるかと思いますので、簡単にご説明したいと思います。
まず、アラジン。新国立劇場が誇る大スター、福岡雄大が務めております。30年の歴史を持つ新国立劇場バレエ団ですが、その歴史の後半の15年を一人で支えた男と言っても過言ではないでしょう(もちろん他にもたくさんの方が尽力されてここまできたことは言うまでもありませんが、ここは派手に紹介したいのでこう言っておきます)! ここ10年くらいはほぼ全ての作品で主役をこなし、その絶対にミスをしない最強のテクニックと、いつ見ても役そのものとして登場する芝居の実力を併せ持つベテランで、福岡さんの出ている日を見ておけばまず間違いがありません。その凄まじさゆえファンにキングとあだ名されて愛されています。
アラジンは福岡さんの十八番の一つで、役とご自身のパーソナリティもかなり近いそうです。今回の映像よりももう数年前にアラジンを演じた際、雑誌「ダンスマガジン」において「初めてプリンセスに会ったあとの背中の演技が素晴らしい」と褒められていたのを私はよく覚えていますが、今回も表情に限らない全身の芝居をお楽しみいただきたいです。また、ベテランゆえか、かなり自由な芝居を繰り広げており、そこも見どころです。宝石の洞窟のサファイアの踊りで、座っているサファイアを勝手に触ろうとするのを見てめちゃくちゃ笑ってしまいました。
プリンセスはみんな大好き小野絢子さん。どれくらい「みんなが好き」かというと、「ダンスマガジン」が年一で行っている投票企画・好きなダンサーランキングで三年連続一位を獲得しているほどです。日本バレエ界の女王、と言いたいところですが、とても可憐な容貌をお持ちで、雰囲気はまさにプリンセスと言ったところ。ご自身はストイックでクールな方のようですが、お芝居では様々な役を軽々と踊りこなす名優です。そのお芝居に、ストイックでクールな日々のお稽古の積み重ねがあることは言うまでもないでしょう。
アラジンと出会った時の表情、父を想う娘としての仕草、マグリブ人のアジトに連れ去られ、体を張って危機を潜り抜けようとする覚悟、そして助け出された時に安心して泣いてしまうこと…アラジンに負けず劣らずくるくる変わる表情が、一秒も見逃せません。なお、この作品、プリンセス役には名前がなく、ジャスミンかどうかはわかりません(名前のない役、バレエにおいてはたまにあります。シンデレラの王子とかもそうです。四季で言うと、バケモノの子の「宗師」とかが近いのかな)。
また、この二人、バレエが上手いんだな〜〜〜。プロ捕まえておいてバレエが上手いって失礼すぎるんですけど、でも本当にバレエが上手い。足の踏み替えなどが極端に少なくて、かつ、二人で組んで踊る時も軽々と大移動し、それでいて全く大変そうに見せないところ、組んで踊りながらもお芝居も忘れないところ…。「プロのバレエ」というのはこういうものだ、と示すためのお手本としても申し分ない映像で、そういう点でも大注目です。
あとはやはり、なんと言ってもジーンは外せないでしょう。渡邊峻郁(わたなべたかふみ)さん、読めね〜、と思った方も多いかもしれませんが、私の贔屓です。背の高いイケメンで、女性ファンがとても多い、とってもかっこいい方。シンデレラの王子なんかをサッとこなす様子がサマになる、文字通り王子様系の方ですが、今回はかなりキャラクターの異なる役であるジーンに挑戦されています。二回目だったかな? 王子様系の雰囲気を気品に変換し、人間らしくなさとして漂わせている、只者ではないな、と思わせるジーンです。
峻郁さん、最近テクニックにますます磨きがかかり、安心して見られるようになってきました。腕によりをかけたテクニックを大量に披露してくれる結婚式のシーン(「プリンス・アリ」に近いと考えていいと思いますが、全く違うシーンになっています)で踊り狂う様子は必見です。
また、この峻郁さん、何かとアラジンと衝突する衛兵の隊長をやっている渡邊拓朗さんのお兄さんでもあります。四季もそうですが、新国にも時々兄弟・姉妹が在籍していることがあり、ここはそのうちの一組です。二人の違いを比べてみると面白いかもしれません。拓朗さんはヒゲを生やし、目ん玉ひん剥いたりアラジンをヤバい表情でバカにしたりするかなり面白い隊長で貫禄もありますが、四季で言うとおそらく大鹿さんや菊池さんあたりと同い年。若手から中堅に足を進めたい、これからが期待のホープであります。
本当は全員紹介したいのですが、あまりにも長くなるのでとりあえずこれだけにします。他に聞きたい人は直接聞いてください!
◎おわりに
お読みくださりありがとうございました。私はバレエが好きだけど、逆に歌のことはよくわからなかったり、歌舞伎や浄瑠璃などの日本の芸術にはすごく疎かったりします。皆さんそれぞれ他に好きなものがあると思うので、そういうものをみんなで共有していけたら、きっともっと楽しいですよね。と言うわけでぜひ、アラジン見てみてください。おわりです。

