バレエ・コフレ 2025/03/15

バレエ・コフレ 2025/03/15

簡単に感想をまとめておきます。かなり評論家気取り文体ですが、素人の色眼鏡による感想で、思ったことをそのまま書いています。ちがわね? と思っても、ほーんコイツさては素人やな、と読み流してください。ご了承いただけた方のみお読みください。

キャストを簡単にメモしておきます。敬称略ですがご了承ください。

火の鳥:小野・奥村・小柴・益田
精確さ:米沢・直塚・根岸・渡邊・速水
エチュード:木村・井澤・福岡

プリンシパルですぎだろ。ありがとうございます。

◎精確さによる目眩くスリル

いきなり順番が前後しましたが、一番印象に残っているので最初に書きます。今もシューベルトの交響曲第9番の第4楽章を流しながら書いています。

めちゃくちゃよかった。ヤバい。

おれは今日これを見にきたんだなあ。と思いました。正直感想としてはこれで十分だと思っているのですが、一年後ぐらいに見返した時に「何も思い出せねえじゃねえか。腹を切れ」とキレる自信しかないため、もう少し書いておきます。

幕をなくした四角い舞台、変わらない照明、目に鮮やかで認識に手間取らない衣装の色、余分なチュールや布を全て廃した衣装の形、聞いていて違和感のまったくない有名なクラシックの名曲。序曲も終曲もなく、幕が開いて始まって、音が終わって幕が閉まって終わる。踊りを見ずともこの要素だけで「バレエを極限までシンプルにするとこうなるのか」ということがよくわかって、それだけでもうめっちゃ楽しかったです。大好きなバレエを(そして大好きな新国立劇場バレエ団を)、余計なものに全く囚われることなく純粋に楽しめるのがすごく嬉しくて、夢中になって見ました。

女3男2というのもすばらしかったです。こちらも、コールドとかパドドゥとか、そこら辺を極限までシンプルにした結果の人数だとすぐにわかりました。プログラムとかにも書いてあったことですが、ソロ、パドドゥ、パドトロワ、パドカトル、コールドとソロを合わせた踊りを、目まぐるしく一気に楽しめて、それでいて違和感のない形で進んでいく、というのがかなり新鮮で、かつとても古典的でもありました。パの構成も面白くて、カッチリしたクラシック的なところがあったと思いきや、オフバランスの難しいパートナーリングがあったり、アレグロのポワントワークで魅せたすぐ後にジャンプの見せ場があったり。とにかく本当に楽しかった。これに尽きます。

バレエを解体して幾何学的かつ簡潔に作り直した「フォーサイスの思うバレエ」だということみたいですが、決して、フォーサイスだけが「これがバレエだ」と思っているな、という作品ではありませんでした。私たちもみんなこれのことをバレエだと思っています。バレエを見にきたなあ、と私は心の底から思えました。ここには全てがあります。非常に純度の高い作品で、何度でも見たい名作です。

とてもよい作品なので、他のバレエ団にも上演してほしいなと思いました。シンプルゆえに、かなりダンサーの色が出て、ひいてはそれはバレエ団の色として強く押し出される形になると思ったからです。具体的な団の名前を出しますが、たとえば、KにはKの、東バには東バの、新国とはまったく異なる「スリル」があると思います。個人的にスタダンを贔屓にしているため、スタダンで見たいと思いました。万が一上演したら飛んで見に行くけどなあ。池田・林田・渡辺・塩谷・冨岡、でどうでしょうかと言いたいところですが…。恭子さん引退しちゃったの寂しすぎます。あ、石川龍之介さんも出てほしい…。妄想甚だしすぎるので薄字にしておきます。

ただこれ、踊る方はめちゃくちゃ大変だぞ。ヤバい。正直あと七倍くらいあってもいいと思いながら見ていたのですが、そんなことをしたらダンサーが死にます。今回の五人は本当に素晴らしくて、見ていてまったくハラハラしませんでしたが、でもやっぱり大変すぎるな。と思いました。けっこうダンサーの癖や雰囲気がよくわかる作品でもあり、特に男二人はそれぞれの良さがすごくよくわかって面白かったですね。速水くんのジャンプやっぱめっちゃ目立ってた笑 ‪峻郁‬さん…私の贔屓なんですが…テクニック大魔神でしたね…正直、もはや魔王の風格でした。

女性陣三人も素晴らしくて、それぞれが際立っているんだけどぶつかってバチバチ、ということはなくて、こういうところ本当に新国の好きなところだなあと思いました。唯さんまたうまくなりましたか…? みほちゃんの堂々たる風格も健在で最高。「直塚美穂です」ってデコルテに書いてあるよね。根岸さんもこの二人と遜色なく張り合っており、パキパキの動きが見ていてとても楽しかったです。このお三方はそれぞれプリンシパル・ソリスト・ファーストアーティストと役職も違いますし、新国に在籍するまでにたどってきた(特に海外経験に関する)道のりもまったく違っています(みほちゃんと唯さんは兄弟弟子ですが!)。こういう、いろんなところにルーツがあるいろんなダンサーたちを並べてお出しし、それぞれの個性を際立たせつつも調和をとって一つの作品とする、というのが今の新国立劇場バレエ団であり、このバレエ団の目指すところだよな、と思えて、かなり激アツでした。

◎火の鳥

やっぱ曲がいいですね。本当に。「終曲」最高でした。これ聴くだけでも、来て良かったなと思ったくらい。

クラシックまったく詳しくないので本当に適当なことを言うのですが、見ていて思い浮かんだのは、コルサコフの「シェエラザード」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」だったんですが、これらとは何か接点あるんですかね。コルサコフは「火の鳥」を題材にオペラを作ってるらしいのと、バレエ・リュスがシェエラザードをレパートリーにしているので、この辺りからの印象かなあ。ムソルグスキーも同国の作曲家だから? ラヴェルは同時代の人だからでしょうか?

正直、絢子さまの一人勝ちでしたね。あの火の鳥に全員やられるのはまあしようがない、という感じです。マジで、バレエが、うまい。その上に芝居まで完璧にのせてくる。もう頭が上がりません。奥村王子にはああいうことさせたらかなり天下一品ですね。ちょっとやんちゃだけど意志の強い感じの王子で、けっこうなんでもとりあえずやってみようって感じ。益田さんかわいかったわね…。可愛いだけでありがたい役ですけど、繊細な踊りも見ていて清楚でよかったです。小柴さん、やるやん。小柴さん、かなり団内で唯一無二になってきています。ヨボヨボのジジイなんだけど、誰も逆らえないのも理解できる雰囲気をあんなに一瞬でバッと出せるのすばらしい。入団したくらいの頃から知っているのでとてもうれしいです。

作品自体は、詰め込みすぎだろ。とはちょっと思いました。浅学の極みのためバレエ・リュスをあまり知らないから抱く感想かもしれませんが。白鳥の湖なんて伸ばしに伸ばした四幕構成やぞ。という気持ちになりました。正直三幕くらいある全幕ものにしても問題ない題材だと思うんだよなあ。でももう一回見たら、一幕ものとしてのこの作品の良さもわかるかもしれません。少なくとも飽きずに見られるという点では、一幕なのはとてもよいと思います。いろいろわかりたいことが多いので、また見たいです。

◎エチュード

上記2作と一緒にやるなよ。というのが正直な感想です。だって大変すぎだろ。コレ。

バレエコフレというタイトルの今回の公演だったけど、「1000000000カラットのクソデカ宝石を三つ用意しました。」みたいな、脳筋が考えたバカのトリプルビル?(本当にごめんなさい。一応褒めています)みたいな公演だったんですよね。私はそうだったんですけど、やる方はもちろんのこと、見る方もかなり疲れたんじゃないですか?

で、コレはそのクソデカ宝石の中でも一段とクソデカでした。これ単体で上演したらどうなるかちょっと気になります。若干大変そうだな、というのがわかる感じだったので……。

木村優里を真ん中に立たせるためには、井澤と福岡を呼んでこないといけない。というのはよくわかりました。ゆりちゃんすごすぎたな。上で‪渡邊さんのことをテクニック大魔神と言いましたが、福岡さんは魔神の時代は終わり、一周まわって人間でした。なんというか、なんてことはないという顔でなんてことはないことをしているくらいにしか見えないんだよね。かなりとんでもないことをしているのに。特にこの作品だとそれが際立つ感じでした。駿くん、本当に上手くなったなあ。という失礼な感想を抱いてしまいましたが、まったく怖いところがなくて、安心しきって見れました。かなりヤバい三人組で、見応えありましたね(あと、水井&山田コンビの日をさほさんに任せた理由もよくわかりました。水井さんと山田さんとさほさんでも見てみたいな、かなり雰囲気変わる気がしました)。

あとはこの人いいなあ。と思ったら奥田花純さんでした。ピルエットのところだったかな。マジで、いつもそうなんだわ。この人いいなと思ってオペラグラス見ると必ず奥田さんまである。本当に好きだ。

曲がツェルニーというのがちょっとウケました。

個人的には、私が見た日ではないのですが、かなりウキウキでこの作品に出られることの喜びを語っていた李明賢さんが怪我で出られなくなってしまったのが、バレエ団ファンとしては悔しいし、残念だったなと思っています。またきっとやってほしいな。アリスの白兎に抜擢されていたので、そこで思う存分暴れてほしいですね。

◎おわりに

最近劇団四季ばかり見ており(名古屋に来てくれるんですよ!!!!!!あの人たちは!!!!!!!!)、思考力を必要とする作品や様式美そのものみたいな作品を見ていなかったので、今回のこの三作を見たのがかなり刺激になりました。バレエ、もっと見たい。やっぱり私の原点ですね。

不思議の国のアリスと、ザ・カブキが見たくなっちゃいました、六月を観劇月間にするしかないかな。アリス見て、何も考えずにバレエを頭空っぽにして楽しむやつをやったあとに、カブキ見て、脳内の引き出しという引き出しから歴史の知識を引っ張り出しつつ、知っているバレエの表現技巧と照らし合わせながら、ものすごい集中力で読解に専念する、みたいな観劇がしたくなっちゃいましたね。あとはバランシンが見たくなった。シンフォニー・イン・Cとか、またやってくれないかな。おわりです。