2022年ごろの名古屋LKの感想です。別場所から移動させてきました。この日の私は本城おじさんを見て発狂していたようです。
ご存知の通り、劇団四季のライオンキングにハマってしまい、半年で五回見ました。もっと行ってもよかったのかもしれないけど、鑑賞した作品は二週間置かないと感想が固まらず、1ヶ月置かないと消化しきれない体だということが薄々わかってきたのでやめました。もったいない楽しみ方はしたくないからね。
役者によってその日のキャラクター同士の関係性が全く違うことが面白くて、何度も足を運んでいろんな家族を見ました。その中でも特に面白かったことの一つを書き留めておく、というか、忘れたくないのでメモしておきます。
一回目のムファサが平山信二さんだったわけだけど、王様というよりも圧倒的にお父さん、優しくて包容力のある穏やかな父親でした。やる気がなくひねくれた弟の扱いに困っている様子が前面に出ていて、本当は一緒に王国を治めていきたい、二人でうまくやっていきたいと思っているんだろうな、という印象。邦訳アニメ版の大和田伸也よりずっとやさしい(と見た時は思った。見返してみると大和田さんもかなり優しいが……)。
見てすぐに思ったことのうちで一番覚えているのは、アニメ吹き替え版を見たときに感じた「この人、弟にはつらく当たるくせに(最初の洞窟のシーン)、自分の命が危ないときには無条件に助けてもらえると思い込んでいるんだなあ」という印象が平山さんには全くなかった、ということです。そのレベルのやさしいパパでした。
その日の弟はかの有名な道口瑞之。この人のスカーは二回見ました。見た人はわかると思うんだけど、道口さんがやると、他の人と比べてあまりギラギラしていないんですよね。兄からはかわいい弟(?)だけど困ったやつと思われ、群れの他のライオンたちからは、やる気もないし能もないくせになぜかずっと兄のすねをかじってだらだらしているメーワクな奴、という印象を持たれていそう。
ところが彼は洞窟のシーンあたりから少しずつ変わり始めます。覚悟しろでその一端を観客に見せたのち、「王様万歳!」で兄に、「だが王は死んだ!」で甥に、「覚悟しろ!(リプライズ締め)」で群のメスに対して本性を暴露するといったところ。つまり平山ムファサは弟の心の奥底のやばい部分をよく知らなかったんでしょう。そりゃ死ぬときもビックリ顔になるわな。
こののち伊藤韓→金久高橋→内海道口と見た後、五回目に平山ムファサと再会。それがこの記事で触れている日で、スカーおじさんは本城裕二さんでした。そうして再び目にした平山さんを見て目が点に。
優しくない。
え!?
だって平山さんといえばあの優しいお父さんだよ!? ファンの人の感想にもそう書いてあったし一回目の観劇の感想は間違ってないはずなのにどうして!でもどっからどう見ても全然優しくないのです。なんかギラついてるやん。怒鳴るし、額の青筋が見える気がするし、なんだかずっと怒っている。どうしたムファサ、お前は誰だ!?!?!? と思っているうちに彼はそのまま死んでしまいました。
まだ観劇に慣れきっていなかったころなので、一回目の平山さんの印象に間違いがあったのだろうか…あれは幻覚だったのだろうか…私の見間違いだろうか…などと思いながら悶々と過ごしていましたが、あるとき「同じ人がやっていても、相手が違うと全く違って見える」という感想をみました。これか〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!
今思えば、相手が違うと芝居も変わるなんて、そんなことは当たり前なんだけど、私は同作品を複数回見ることを、ライオンキング以前はほとんどやったことがなかったのです。新国立劇場バレエ団の「ロメオとジュリエット」くらいかな。でも、あれは、日によって主要キャストが全とっかえになるので、同じ人に対峙する別の人間というのはほとんど見る機会がなかったのでした。
話を戻します。本城スカーの感想でよく見るのは「瞳孔が開いている」というやつ。見るまで意味が分からんと思っていたのだが(だって瞳孔が開いていたら死んでいるではないか)、これが見てみたら本当に瞳孔ガン開きとしか言いようがない表情だったのでめちゃくちゃ笑ってしまった。 一人で。周り誰も笑ってませんでした。
余談ですが、私結構一人で爆笑してしまうんですよね。もちろん声に出しては笑わないんだけど、声出しそうになって周り見たら誰も笑ってなくて真顔になる、ということはけっこうある。また話がそれたな。
その日は、二階で見たので「覚悟しろ」で骨の上で踊るところなどは高さ的に目が合ってもよかったと思うけど、まるで目が合わない。とっても怖かった。これも受け売り感想になるけど、「俺の野望が叶う日が来る」あたりで彼はもう象の墓場など見てはいません。彼に見えているのは「俺の野望が叶」った日のプライドランドであり、遠く美しい景色。
完全に自分だけの世界に浸りきっていて、瞳孔かっ開いて狂気の笑みを浮かべオクターブ上げて絶叫するガンギマリ本城おじさんは恐ろしいことこの上なく、何もない方向に叫び続けているその様はそんな南の方(方角は知らないが)に何かあるんですかいと声をかけたくなるほどヤバい。なんか良くない薬とかやってんのかな。
しかしまあ、あの態度なら、そりゃ二階後方に座って彼のカリスマ性に浸れればそれでいいと思っている下っ端ハイエナ(おれのこと。「あのシーンは観客みんなハイエナになっておじさんに説得されに行くのが一番楽しい見方教」の敬虔な信徒なのです)に目を向けるわけがありません。素晴らしい狂気っぷりでした。 そりゃ平山ニキもあれに対抗するためにはギラギラの戦士になるしかないでしょ。思い出してみると納得の芝居なのでした。
ただ、そういえば本城さんは「わしに挑戦する気か!」で凄まれて一瞬で首を引っ込めていたので(演出的にどこかに抵触していないか少し心配になったレベルの早業だった)、全面対決をあの時点では避けようとしていたような覚えもあります。けれども一幕最初の時点で既に平山さんがギラギラだったことを考えると、本城スカーの本性はあの時点で兄にはばれていたのかもしれません。そう思うと道口スカーの方が一枚上手だったなあ。能あるライオンは爪を隠すんやね。
ものすごくどうでもいい補足だけど、ちょうどこの頃、古い観劇の感想のサイトを見つけて、その記事のファンになっていました。それで、それを読んだノリで書いたのが上の記事だったと思います。そのサイトは、めちゃくちゃなことがいろいろ書いてあって、言い過ぎだろ!と爆笑しつつ、だけど言い得て妙というか、あまり否定できないんですよね。読んでいるとくやしくなるほどです。
私の目標は、万が一記事に出てくる俳優ご本人に見られたとしても(一ミリも見られたくないのでそこはわかってほしいですけど)、膝を叩いて笑ってもらえて、不問に付してもらえるくらいの面白い文章が書けるようになること。でも、私程度の文章では、まだ許してもらえそうにないですね。王様にはなれなくていいから、早くあれくらいの文が書けるようになりたいなあ。おわりです。

